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2020-05

バンザイガール

  AM7:20、夏美は通学のため痴漢電車で名高い埼京線に乗車していた。すし詰めの箱の中に身を置いていると、夏美の背中で何かが動き始めた。そしてその動く物体は、背中からだんだんと下へと下がり、腰に達して来た。夏美は少し体を動かすと、その物体は一瞬夏美の体から離れたが、また背中から動き始めた。すかさず、体を揺すると、また離れたが、今度は図々しく背中からではなく、腰から物体の移動が始まり、制服の中へと移動エリアを広げようと、スカートをまくり上げながら股に直に触れ、今度は少しづつ上へと移動を始めた。
  夏美は、見た目は華奢で従順で大人しい感じに見えるのだが、一応柔道2段の猛者?である。しかし、こんな大量の人がいるのに声を出すのもはずかしいし・・・なんて思ってたら、物体が上移動からだんだん危険ゾーンに伸びてこようと・・・さすがに夏美も少し堪忍袋の緒が切れて息を思いっきり吸い込み、その物体を掴み上に上げて
『この人痴漢です!』
と、大声を上げた。
  すると、周りにいた無表情の集団からの刺す様な冷たい様な視線がいっせいに夏美と痴漢の方に浴びせられたが、また無視されるがの如く視線を戻し、無表情の集団へと変わっていった。バンザイ状態になった夏美と痴漢を取り残して・・・
  そして、夏美と痴漢の止まった時間の中に無機質な電車のカタタン,カタタン・・・という音のみが無情に流れてゆく。その後、最寄りの駅に着いて窓が開いた途端、痴漢は止まった時間から逃れる樣に夏美の手を振りほどき、逃げ出して行った。夏美は、すかさぐ痴漢を追いかけ、一本背負いで痴漢を取り押さえ、駅員に突き出した・・・が、そのゴタゴタに時間を取られて学校は遅刻してしまった。
  結局夏美に残ったのは、遅刻と冷たい視線と無視された無常観と、バンザイ状態でさらしものになった屈辱感に似たものだけだった・・・ああ・・・悲しきバンザイガール。


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マッコウクジラ

マッコウクジラ

『気まぐれ文学館』
・第15回,16回短歌現代新人賞 佳作
・第47回角川短歌賞 最終予選通過
・H15年度 歌壇・歌壇発新星36人 一年連載
他・・・
現在は当ブログにて地道?にゲリラ活動中・・・