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2020-08

由布子の朝

 もう社内からはお局様と囁かれる年齢になった由布子、最近の由布子には一つのささやかな楽しみがあった。それまでは、態度Lな由布子だったが、ある瞬間から天使の様な由布子に変わった。それは、最近転勤してきた裕太の存在だ。裕太は由布子よりも7歳若く、体育会系のさわやか系で最初の歓迎会での話ではまだ彼女もいない・・・という事だった。
 それまでの由布子は、
「お茶汲みなんて雇用均等法に反する女性蔑視よ!」
なんて叫んでいたのだが、裕太が来てからは、自ら望んで朝のお茶汲みをする様になった。しかも、給湯室を閉め切って・・・その給湯室の秘密は後で記述するとして、皆の好みの飲み物を取り揃えた由布子は、役職の順列に従って、完璧に飲み物を配って、立場的に現在一番順列が低い裕太には最後に飲み物を置く事になる。内心は裕太に最初に置きたいのだが、そんなわざとらしい事をしては、礼儀正しい裕太の気を引く事は出来そうもないので、立場をわきまえた女を演じている訳である。
部長から、
「由布子さん変わったね?」
なんてからかわれて、内心むかついても
「男は男らしく、女は女らしくかな?最近私もそんな事がわかる年齢になったし」
・・・と、しおらしい女を演じ、最後にコーヒーを置く裕太には、
「いつも最後になって少し冷めててゴメンネ」
・・・と、気を遣って裕太の席にコーヒーを置く。
「そんな事ないっすよ。そうやって由布子さんが気遣ってくれるだけで僕はいいっす」
・・・と、由布子のそんな偽りの優しさに何か安心感を覚える裕太がそこにあった。
 しかし、裕太は知らない。給湯室を閉め切って由布子が行っている儀式を・・・由布子の儀式とは、飲み物を入れる際に、裕太に入れるコーヒーカップをまず取り出し、胸の谷間にそのカップを入れ、少しでも由布子のぬくもり?をカップに与える。そして、最後に裕太のコーヒーを入れる為に、胸の谷間からカップを取り出し、唾液をたくさん含ませて、裕太のカップを一周舐め回しからコーヒーを入れているのだ。由布子はカップを舐めながら、「裕太・・・好き!好き!アイシテル!」と呪文の様に小さい声でそうささやいている。
 結局裕太は由布子のぬくもりと、生霊のとりついた様な由布子の呪文と唾液のミックスしたコーヒーを毎日飲んでいる事になる。
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マッコウクジラ

マッコウクジラ

『気まぐれ文学館』
・第15回,16回短歌現代新人賞 佳作
・第47回角川短歌賞 最終予選通過
・H15年度 歌壇・歌壇発新星36人 一年連載
他・・・
現在は当ブログにて地道?にゲリラ活動中・・・